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債権譲渡

公開:2025/09/09

令和元(2019)年度税理士試験の国税徴収法第2問は、「(譲渡人)Aは(譲受人)Bとの間で)債権譲渡契約及び債権譲渡通知は有効なものとする。」、「(債務者)Cは、平成31年2月28日、Bから、「前記事項証明書」を添付した「債権譲渡通知書」を受け取っていた。」、「譲渡禁止特約は付されていない」と記述されています。本節では、債権譲渡(民法)について解説します。なお、消費税法6条1項に、「国内において行われた資産の譲渡等のうち、別表第1に掲げるものには、消費税を課さない」と規定されており、同表第2号に、有価証券等の譲渡が挙げられています。有価証券等には、貸付金、預金、売掛金その他の金銭債権が含まれます(消基通6-2-1(二)ので、(金銭)債権譲渡は、消費税が非課税です。1 債権譲渡とは?債権譲渡とは、譲渡人と譲受人との間の契約によって、債権の同一性を保ったまま債権を移転させることをいいます。債権者が譲渡されるのは、支払期限前に現金化するためや代物弁済(3-8(2) p.206参照)のためなどです。◎債権譲渡旧債務者(譲渡人)→ 債務者 → 新債務者(譲受人)2 債権の譲渡性(1)譲渡の自由債権は、原則として自由に譲渡することができます(民法466条1項本文)。譲受人と譲渡人との合意で足り、譲渡契約の当事者ではない債務者の同意は必要ありません。(2)譲渡の制限債権の性質が譲渡を許さないときは、譲り渡すことができません(同条1項但書)。例えば、使用貸借権(民法594条2項、3-10(2) p.214参照)や賃借権(民法612条1項、1-7(7) p.55参照)は、債務者によって承諾が認められない限り、自由に譲り渡すことができません。また、法律で禁止されているときは、債権譲渡はできません。例えば、扶養請求権は、特定の債権者に対して給付されることが必要なため、譲渡が禁止されています(民法881条)。これに対して、債権者と債務者との間で特約を結び、債権譲渡を禁止・制限することができますが、原則として、それに反してなされた債権譲渡も有効です(民法466条2項)。例外として公的年金債権についての特約がある(民法466条の5)。そのうえで、一定の譲受人に対しては債務の履行を拒むことができるとすることで、債務者の保護が図られています(同条3項)。債権譲渡の禁止・制限の特約は、債務者の同意なき譲渡(例、預金債権)が主張して付されることが多いです。(3)将来債権の譲渡意思表示の時に現に発生していない債権(将来債権)を譲渡することもできます(民法466条の6第1項)。例えば、裁判所に診療報酬債権を譲渡することやBに銀行から金銭を借り受ける診療報酬債権を譲渡することができます。3 債権譲渡の対抗要件(1)債務者に対する対抗要件と第三者対抗要件債権譲渡は、譲渡人(譲受人ではない)が債務者に通知をし、または債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができません(民法467条1項)。債務者に対抗するためには、通知または承諾があればよいのですが、第三者に対抗するためには、確定日付のある証書による通知または承諾が必要です(同条2項)。確定日付のある証書とは、内容証明郵便や公正証書です。例えば、債権の二重譲渡があった場合に、第一譲受人と第二譲受人の優劣は、確定日付のある証書による通知が債務者に到達した日時の先後によって決まります。譲渡契約の締結日時の先後ではありません。また、債務者が異議を述べずに承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由(例、弁済、相殺)があっても、これをもって譲受人に対抗することができません(民法468条1項)。譲受人の信頼を保護するためです。COLUMN 債権譲渡登記譲渡人が法人の場合、民法の対抗要件制度(本節の(1))による債権譲渡以外に、「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」による債権譲渡を選択することもできます。この法律による債権譲渡は、債務者以外の第三者に対する対抗要件が分離されています。法律の定める債権譲出ファイルに記録されれば、債務者以外の第三者に対する対抗要件である、確定日付のある証書による通知があったものとみなされます。債務者に対する第三者対抗要件を具備することです。これに該当するためには、さらに、譲渡人または譲受人が債務者に対して登記事項証明書を交付して通知することなどが必要です。本節の冒頭で紹介した試験問題では、債権譲渡登記がなされ、第三者対抗要件を具備するとともに、債務者が、譲渡人から登記事項証明書を添付した債権譲渡契約書を受け取っており、債務者対抗要件も具備しています。POINT 1債権譲渡とは、譲渡人と譲受人との間の契約によって、債権の同一性を保ったまま債権を移転させることをいう。債権者と債務者との間で特約を結び、債権譲渡を禁止・制限することはできるが、原則として、それに反してなされた債権譲渡も有効である。債権譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、または債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。確定日付のある証書によるものでなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。第三者対抗要件を備えた債権譲渡の優劣は、確定日付のある証書による債権譲渡通知が債務者に到達した日時の先後によって決まる。

「「税理士業務で知っておきたい法律知識」 森 章太・ 2022年4月1日」 ISBN978-4-534-05917-8

詐害行為取消権

公開:2025/09/09

平成29(2017)年度税理士試験の国税徴収法第2問は、「納税者が滞納者を国の徴収を免れるため財産を処分したと認められる場合、国は詐害行為取消権の行使を請求し、その取消しを訴えたい」と出題されています。詐害行為取消権の規定は、国税の徴収に関する法律と並行して適用される規定であり、通則法第42条に定められています。本節では、詐害行為取消権(民法)について解説します。1 詐害行為取消権とは?詐害行為取消権とは、債務者が債権者を害することを知ってした行為(詐害行為)の取消しを裁判所に請求することができる債権者の権利です(民法424条1項本文)。債権者が債務者の財産管理への介入を認める例外的な権利です。債務者が責任財産(担保物権を持たない債権者への弁済に充てられる債務者の財産)を減少させる行為をしたときに、その行為を取り消すことによって、責任財産の保全を図ります。例えば、多額の負債を抱えた債務者が、唯一の財産である不動産を親族に贈与したときに、債権者は債務者の親族に対して贈与契約の取消しを請求します。2 詐害行為取消権を行使する相手方詐害行為取消権は、裁判上行使しなければなりません。債務者が詐害行為取消権を行使する場合の相手方は、受益者(債務者の詐害行為によって利益を受けた者)または転得者(受益者から財産を取得した者)です(民法424条の2第1項)。債務者は相手方となりません。詐害行為取消権に係る訴えを提起したときは、債務者は、債権者に対し、遅滞なく訴訟告知をしなければなりません(同条2項)。詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者(及びそのすべての債権者)に対しても効力を有するため(民法425条)、債務者の手続保障を図るためです。3 詐害行為取消権の要件受益者を相手方とする場合、詐害行為取消権を請求するための要件は、下記のとおりです。(1)債権者の要件まず、債権者に対する債権(被保全債権)が金銭債権であることです。また、債務者の責任財産の保全が制度趣旨であるため、全額債権であることが要件となります。次に、被保全債権が詐害行為の発生以前に生じたものであることが要件です(民法424条3項)。被保全債権の発生が見込まれた時点での債務者の責任財産をあてにして期待することが保護に値するからです。取戻権は詐害行為の発生の前後を問いません。(2)債務者の要件債務者が詐害行為を目的とする行為をしたことが要件です(同条2項)。債務者による家族法上の行為を取り消すことができるかどうかは問題となります(本節のCOLUMN)。次に、債務者が行為によって債務超過を来すこと(または債務超過を強めること)が要件です。詐害行為は債権者を害することにならなければなりません。債務者が無資力でなければなりません。詐害行為だけでなく、債務者の資力は回復し、債務者は、債務の履行が可能になります。(3)受益者の抗弁受益者は、①詐害行為時において債務者を害することを知らなかった(同条1項但書)、②被保全債権が強制執行により実現することのできないものではない(同条4項)、③被保全債権において担保が設定された債権(担保によって優先弁済権が及ぶ範囲)でない(同条4項)という反論をすることができます。4 詐害行為性(1)財産を減少させる行為財産を減少させる行為(例、無償行為、低額譲渡)は、詐害行為性が認められます。(2)相当の対価を得てした財産の処分行為債務者が自己の所有不動産を売却し、受益者から相当の対価を取得しているときは、原則として、詐害行為にはなりません。ただし、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、詐害行為となります(民法424条の2)。① 行為が、不動産の金銭への換価その他の処分による財産の種類の変更により、債権者において隠匿、無償の供与その他の債権者を害することとなる処分をするおそれを生じさせるものであること② 債務者が、行為の当時、対価として取得した金銭などについて、隠匿等の処分をする意思を有していたこと③ 受益者が、行為当時、①②を知っていたこと(3)既存の債務の担保の供与または債務の消滅に関する行為債務者がした既存の債権についての担保提供または債務消滅に関する行為(例、弁済)は、原則として、詐害行為にはなりません。ただし、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、詐害行為となります(民法424条の3)。① 行為が、債務者が支払不能の時に行われたものであること② 行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであることまた、上記に掲げる要件のいずれにも該当する場合に、受益者が、債務の履行またはその時期が債務者の義務に属せず、またはその方法が債務者の義務に属しないものであるときは、上記の行為(及び上記に加えて、受益者が支払不能であったことを知っていたこと)を詐害行為となります。5 詐害行為取消権の効果(1)詐害行為の取消しと逸出財産の取戻し詐害行為取消権の効果は、詐害行為の取消しと逸出財産の取戻しです。残余財産の返還が困難である場合、現実の返還が困難であるときは、債務者は、その価額の償還を請求することができます(民法424条の6)。(2)逸出財産の返還の方法詐害行為取消権は、債権者の責任財産の保全を目的とするため、逸出財産は債務者に返還されるのが原則です。逸出財産が不動産の場合(例、受益者への移転登記)は、移転登記が抹消され、債務者に返還されます。一方、金銭または動産の場合、取消権者は、受益者・受領権限が認められており、受益者に対して、自己に返還することを求めることができます(民法424条の9)。返還を受けた取消権者は、受益者に対する債務と相殺することにより、債権を回収することができます。(3)受益者の権利受益者は、債務者がした財産の処分行為(詐害行為)が取り消されたときは、債務者に対し、その財産を取得するためにした反対給付の返還を請求することができます。債務者が反対給付の返還をすることが困難であるときは、価額の償還を請求することができます(民法424条の2)。また、債務者がした債務の消滅行為が取り消された場合において、受益者が債務者から受けた給付を返還したときは、受益者の債務者に対する債権は回復します(民法425条の3)。6 詐害行為取消権の抗告訴訟期間詐害行為取消請求に係る訴えは、債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から2年、または債務者の行為の時から10年を経過したときは、提起することができません(民法426条)。詐害行為取消権は、債権者の知らない行為を対象とするものであり、第三者に与える影響も重大な処分を伴うものであり、第三者に与える影響が少ないため、法律関係を速やかに確定する必要があるから出訴期間が短くなっています。7 詐害行為取消権の課税関係取り消される行為は財産を処分する行為であり、受益者に移転した財産は課税されます(民法424条の8第2項)。詐害行為取消権により取り消されるまでには、受益者は、受益者としての地位を享受できます。COLUMN 家事事件法上の詐害行為取消権債権者がした家事事件法上の詐害行為取消権を債権者がした家事事件により生ずる債権は、特別の事情がある場合を除き、無効とされます(1-1(2) p.424参照)。遺産分割の前提となるのは、遺産分割が前提となり、相続人が債務者である場合の債務超過の相続放棄は、詐害行為取消権の対象となりますが、遺産分割(1-15(1) p.243参照)は、取り消すことはできません。相続財産が確定するまでの間に、相続人がした相続財産の処分は、遺産分割の結果とは異なる場合があります。これに対して、遺産分割は、財産を目的とする行為といえるため、詐害行為取消権の対象となります。POINT 1詐害行為取消権とは、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる債権者の権利である。詐害行為取消権は、裁判上行使しなければならない。詐害行為取消権の効果は、取消しと逸出財産の取戻しである。逸出財産の価額償還が原則だが、債権者は、その価額の償還を請求することができる。詐害行為取消権の責任財産の保全を目的とするため、逸出財産は、債務者に返還されるのが原則である。また、金銭の場合には、取消権者は、自己に返還を求めることができる。

「「税理士業務で知っておきたい法律知識」 森 章太・ 2022年4月1日」 ISBN978-4-534-05917-8

留置権

公開:2025/09/09

平成29(2017)年度税理士試験の国税徴収法第2問は、「留置権」に関する問題が問われています。1項、P株式会社は、所有する自家用車が故障したため、平成28年9月1日、X株式会社に修理を依頼した。P株式会社が修理中の提携会社のA自動車をX税務署長が差し押さえ、その後、修理は完了したものの、所有者Aが修理代金(100万円)を支払わないため、P株式会社が引き続き自動車(評価額800万円)を占有している」と記述されています。本節では、留置権(民法)について解説します。1 留置権とは?留置権とは、他人の物の占有者がその物に関して生じた債権を有するときに、債権の弁済を受けるまで、その物を留め置くことができる権利です(民法295条1項本文)。債務の弁済を間接的に強制するものです。本節の冒頭で紹介した試験問題では、X自動車にP株式会社が修理代金債権に関して生じた修理代金債権の弁済を受けるまで、自動車を留置することができます。留置権は、法律の定める一定の要件を充たせば当然に発生する法定担保物権です。抵当権(1-3(2) p.30参照)や質権(1-4(2) p.42参照)のような、当事者の合意により成立する約定担保物権とは異なります。2 留置権の成立要件(1)他人の物の占有留置権が成立するには、他人の物を占有していることが要件となります。目的物は、債務者が所有する物に限定されません。また、占有は成立要件であるだけでなく存続要件でもあり、留置物が占有を失うと、留置権は原則として消滅します(民法302条本文)。留置権が成立するには、目的物に対して生じた債権を有すること、すなわち被担保債権と目的物との牽連性が認められることが要件となります。本節の冒頭で紹介した試験問題では、修理代金債権と自動車との間に(2-11(3) p.153参照)牽連性が認められます。物の欠陥を原因として占有者が損害を被った場合の損害賠償請求権と物との間には、牽連性が認められます。(2)被担保債権の履行期留置権が成立するには、被担保債権の履行期が到来していることが要件となります(民法295条1項)。3 留置権の効力(1)留置的効力留置権の効果として、留置物を占有し続けることができます。被担保債権の弁済と留置物の引渡しは引換えとなります。(2)対抗的効力留置権は(債権ではなく)物権なので、(債務者に限らず)すべての人に対して主張することができます。本節の冒頭で紹介した試験問題では、P株式会社は、X税務署長(国)に対しても、X会社の自動車に対する留置権を主張することができます(本節のCOLUMN1)。(3)留置物の使用権留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用することはできません(民法298条2項本文)。本節の冒頭で紹介した試験問題では、P株式会社は、債務者の承諾がなければ自動車を使用することはできません。(4)優先弁済的効力留置権には、優先弁済的効力はありません。原則として、目的物の競売から優先弁済を受ける権利はありません(本節のCOLUMN1)。しかしながら、留置権者は、下記のとおり、事実上の優先弁済の地位が認められています。自分だけが履行して相手方から反対給付を受けることができないという事態の発生を防ぐことで、当事者間の公平を確保するものです。また、相手方の履行を促すという効果もあります。双務契約での引渡しが必要となる場合には、留置権と同時履行の抗弁権のいずれも行使することができます。POINT 1留置権とは、他人の物の占有者がその物に関して生じた債権を有するときに、債権の弁済を受けるまで、その物を留め置くことができる権利である。留置権は、法律の定める一定の要件を充たせば当然に発生する法定担保物権である。留置権には、目的物の換価代金から優先弁済を受ける権利はない(滞納処分による換価の場合を除く)が、留置権者には、事実上の優先的地位が認められている。COLUMN 2 商事留置権本節で解説した民法上の規定に定められた留置権です。この他、商法に定められた商事留置権(商法521条)などがあります。商事留置権は、継続的な取引が行われる商人Aと商人Bとの間で生じた債権であれば、債権全体を担保する目的で、商人Bの所有物を留置することができるとされています。商事留置権の成立要件には、①被担保債権が、商人A間において両方にとって商行為となる行為から生じたものであること、かつ②非牽連していること、③目的物が、債務者との間における商行為によって占有した債務者の所有する物であることなどです。民法の留置権との相違点は、被担保債権と目的物との牽連性は不要ですが、上記のとおり特定されていること、目的物が債務者の所有物に限定されることなどです。COLUMN 3 同時履行の抗弁権本節の冒頭で紹介した留置権は、当事者の意思によらず法律の規定によって成立する担保物権です。双務契約(当事者の双方が対価的な意味のある債務を負担する契約)であるため、P株式会社はX会社に対して同時履行の抗弁権(民法533条)を主張することができます。同時履行の抗弁権の効果は、双務契約の一方の当事者は、相手方が債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができるというものです。主観的事情ではなく客観的事情が認められる限り、留置権とは異なり、対価的な効力はありません。

「「税理士業務で知っておきたい法律知識」 森 章太・ 2022年4月1日」 ISBN978-4-534-05917-8

遺留分

公開:2025/09/09

遺言書を作成するにあたって知っておくべき事項として遺留分があります。遺産分割のすべてを相続人の1人に相続させるという内容の遺言書を作成すると、他の相続人の遺留分を侵害し、相続開始の死後に争いが生じるおそれがあります。そこで、各相続人の遺留分を侵害しない内容の遺言書を作成することも多いです。本節では、遺留分(民法)について解説します。1 遺留分とは?被相続人の財産の中で一定の相続人に留保(最低限保障)されている持分的利益を「遺留分」といいます。皆の言い分とすると、遺留分とは、一定の相続人に対して認められる、遺言などによっても奪われることのない、遺産の中の一定割合の持分利益のことです。被相続人からすると、贈与や遺贈(3-22 p.271参照)などによって自分の財産を自由に処分することに対して制限を加えられることになります。遺留分権利者となるのは、相続人(兄弟姉妹を除く)です(民法1042条1項)。そして、各遺留分権利者に留保された持分的割合(個別的遺留分)は、直系尊属のみが相続人である場合は1/3×法定相続分、それ以外の場合は1/2×法定相続分です。2 遺留分侵害額(1)遺留分額遺留分額は、遺留分を算定するための財産の価額に個別的遺留分を乗じて算定します。遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始時において有した財産(遺贈財産を含む)の価額に、被相続人が相続人に対して行った贈与の価額を加え、相続債務の全額を控除した額です(民法1043条1項)。加算対象となる被相続人の贈与は限定されています(民法1044条)。①相続開始前の1年間にされた贈与、②当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってされた贈与、③相続開始前の10年間になされた、相続人に対する、婚姻もしくは養子縁組のためまたは生計の資本としてなされた、相続人に対する、感謝もしくは扶養を継続するための利益またはこれに準ずる利益(特別受益、3-20(2)p.262参照)などです。①と③は、相続人に対する贈与に限定されません。①の1年間の限定は、遺留分侵害額を負担する立場になる受遺者の保護のためです。②は、受贈者を保護する必要がないため、贈与時期による限定はありません。③は、実質的に相続財産の前渡しといえるので10年間の贈与が対象となります。(2)遺留分侵害額遺留分侵害額は、遺留分額から、「遺留分権利者が受けた遺贈及び特別受益である贈与の価額」及び「具体的相続分(寄与分は考慮しない)に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額」を控除し、「遺留分権利者が承継する相続債務の額」を加算して算定します(民法1046条2項)。控除される「遺留分権利者が受けた特別受益である贈与」には、内容が特別受益に該当するものに限定されますが、贈与時期による限定はありません。上記(1)の③の贈与との違いには注意が必要です。◎遺留分侵害額① 遺留分を算定するための財産の価額相続開始時の相続財産(遺贈財産を含む)の価額 + 被相続人が贈与した財産の価額(限定あり)- 相続債務の全額② 具体的相続分上記① × 具体的相続分率③ 具体的利益額具体的相続分 + 「遺留分権利者が受けた遺贈及び特別受益である贈与の価額」-「遺留分権利者が承継する相続債務の額」3 遺留分侵害額の請求遺留分権利者やその承継人などが行為の利益を放棄できません。侵害された遺留分権利者は、受遺者(特定財産承継遺言(3-22(2)p.274参照)により財産を承継し、または相続分の指定を受けた相続人を含む)または受贈者に対して、金銭債権を取得し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます(民法1046条1項、遺留分侵害額請求権)。なお、令和元(2019)年7月1日以降に開始した相続については、金銭債権の取得ではなく、遺留分減殺請求権として、個々の相続財産について(例)共有持分権が発生することになっていました(3-9 COLUMN p.209参照)。遺留分権利者が価額弁償を選択しない場合に、共有関係を解消するには共有物分割を行う必要がありました。改正により国民から「減殺」という文言は削除されました。4 遺留分侵害額の負担額受遺者または受贈者は、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継または相続分の指定による財産の取得を含む)または贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る)の目的の価額を限度として、次のとおり、遺留分侵害額を負担します(民法1047条1項)。① 受遺者と受贈者があるときは、受遺者が先に負担する。② 受遺者が複数あるとき、または受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者または受贈者は、その目的の価額の割合に応じて負担する。③ 受贈者が複数あるとき(同時にされた贈与の場合を除く)は、後の贈与に係る受贈者から順次に前の贈与に係る受贈者が負担する。ただし、受遺者または受贈者が、遺留分侵害額について(法定相続分ではない)を控除した額が上限となります。5 遺留分侵害額請求権の時効期間制限遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅します。相続開始の時から10年を経過したときも消滅します(民法1048条、除斥期間)。6 遺留分の放棄相続開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生じます(民法1049条1項)。被相続人によって放棄を強要され、濫用されるおそれがあるため、家庭裁判所による許可を必要とします。一方、相続開始後においては、遺留分の放棄や遺留分侵害額請求権の放棄は、自由にすることができます。家庭裁判所の許可は不要です。遺留分を放棄しても、相続人としての地位は失いませんし、他の相続人の遺留分に影響を及ぼしません(同条2項)。7 遺留分の課税関係遺留分侵害者は、遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金額が確定したことにより、申告書を提出した相続税または既に決定を受けた相続税について金額が過大となったときは、確定したことを知った日の翌日から4ヶ月以内に限り、更正の請求をすることができます(相続税法32条1項3号)。一方、遺留分権利者は、遺留分侵害額の請求に基づき支払いを受ける金員の額が確定したため、相続税申告書の提出期限後に、新たに申告書を提出すべき要件に該当することとなったときは、期限後申告書を提出することができます(相税法27条1項)。また、相続税申告書の提出後に、既に確定した相続税額に不足を生じた場合には、修正申告書を提出することができます(相税法31条1項)。遺留分権利者の上記申告書は、義務ではありません。なぜなら、遺留分侵害額の請求に基づき支払いを受ける金員の額が確定しても、相続財産額の変動はないからです。もっとも、遺留分権利者が更正の請求をしたときは、税務署長が税額の更正の決定または決定をするため、遺留分権利者に相続税の納付義務が生じます。なお、遺留分侵害額請求について代物弁済の合意をした場合の課税関係については、3-8 COLUMN(p.207参照)で解説しています。POINT 1被相続人の財産の中で一定の相続人に留保(最低限保障)されている持分的利益を「遺留分」という。侵害された遺留分権利者は、受遺者または受贈者に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができる。遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び遺留分侵害額の請求を知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも消滅する。

「「税理士業務で知っておきたい法律知識」 森 章太・ 2022年4月1日」 ISBN978-4-534-05917-8

遺言と遺贈

公開:2025/09/09

税理士試験の相続税法の計算問題では、遺言及び遺贈がよく出題されています。令和3(2021)年度の試験問題では、「被相続人甲の遺言のうち(1)~(8)及び(11)については、甲が公証役場に作成した公正証書遺言により、それぞれ次のとおり定められており、受遺者は、遺贈の放棄をしていない。(9)及び(10)については、共同相続人間で、適法に遺産分割協議が行われた」と記述されています。本節では、遺言及び遺贈(民法)について解説します。1 遺言(1)遺言とは?遺言とは、自分の死後に一定の効果を発生させる単独の意思表示です。遺言者が死亡して、はじめて効力が生じます(民法985条1項)。(2)遺言の能力と年齢15歳以上であれば遺言をすることができます(民法961条)。もっとも、15歳以上の者の遺言であれば、必ず効力が認められるわけではありません。有効な遺言について意思能力がなく、遺言が無効と判断されることがあります。(3)遺言の種類遺言者は、遺言の要式に従わない限り、その効力を生じません(民法960条)。遺言者が死亡すると、遺言の内容やその意思の確認をすることができなくなるので、遺言の方式を厳格にすることで遺言者の真意を確保し、紛争を防止するためです。遺言の方式は、普通方式と特別方式の2種類があります(民法967条)。普通方式には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります(民法968条~972条)。本節では、よく利用されている自筆証書遺言と公正証書遺言について解説します。税理士試験の相続税法の計算問題では、令和元(2019)年度、令和2(2020)年度、令和3(2021)年度はいずれも公正証書遺言が作成されているという前提の問題となっています。自筆証書遺言 公正証書遺言証人 不要 2人以上必要証拠力 認否あり 認否なし保管 保管制度など(自筆証書遺言保管制度) 公証役場など検認 必要(保管制度の場合は不要) 不要件数 令和元(2019)年度の作成件数は1万2852件(司法統計) 令和元(2019)年度の作成件数は11万3137件(日本公証人連合会HP)2 自筆証書遺言(1)自筆証書遺言とは?自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書の全文、日付及び氏名を自分で書き、押印して作成する方式です(民法968条1項)。長所として、遺言書の作成費用があまりかかりません。一方、短所として、作成ルールが守られておらず遺言が無効とされるおそれがあります。また、遺言書の隠匿などのおそれがあります。さらに、遺言者の死亡後に家族に発見されないことによって、遺言能力をめぐって争いになりやすいです。(2)自筆証書遺言の方式と要件遺言の効力を生じさせるときには遺言者が作成の趣旨を理解できるために、遺言の作成ルールは厳格になっています。まず、遺言書は、本人が作成したことが分かるように、全文を自分で書かなければなりません。ワープロ打ちは自書にあたりません。もっとも、民法が改正され、財産目録については、自書でなくてもよくなりました(同条2項)。次に、作成年月日を記載しなければなりません。遺言能力の存否や複数の遺言書がある場合における遺言の前後を判断するためです。押印の必要性も要件ですが、実印である必要はなく指印でも可能です。押印が必要なのは、日本の文書においては押印が署名と同様に文書の作成の完結を意味すること、及び遺言者の同一性の確保にあるからです。遺言者が署名押印を行うことは、民法968条のルールに過ぎず、単なる遺言書の作成について、このルールは適用されません。(3)検認家庭裁判所に請求し、遺言書の原本を保全する手続を「検認」といいます(民法1004条)。検認は、遺言書の形状などを確認して偽造・変造を防止するための手続です。その遺言書の有効・無効を判断するためのものではありません。遺言書の保管者は、相続開始を知った後、遅滞なく、検認の請求をしなければなりません(同条1項)。また、封印のある自筆証書は、家庭裁判所で開封しなければなりません(同条3項)。検認を怠り開封した場合、5万円以下の過料に処せられます(民法1005条)。もっとも、家庭裁判所外で開封したからといって遺言が無効になるわけではありません。検認の請求がされると、家庭裁判所は、検認期日を定め、相続人や利害関係人に期日を通知します。検認期日では、出席した相続人などの立会いののもと、裁判官が封印のある遺言書の開封をして遺言書を検認します。検認後、検認済証明書付きの遺言書を返還します。検認期日に欠席しても、後日、家庭裁判所で遺言書写しを閲覧することができます。令和2(2020)年7月から、法務局(遺言書保管所)に自筆証書遺言の保管を任せることができるようになりました。保管申請書は1件につき3900円です。保管所が遺言書の原本を画像情報として保管します。検認期日は遺言書の検認が不要です。3 公正証書遺言(1)公正証書遺言とは?公正証書遺言は、遺言者から遺言の趣旨を伝えられた公証人が筆記して公正証書によって作成する方式です。公証人という法律の専門家が関与するので、遺言が無効となるおそれが低いからです。また、遺言書原本が保管されるので、検認手続が不要です(民法1004条2項)。一方、短所として、公証人の手数料の支払い(数万円以上)が必要になります。また、遺言公正証書であっても、遺言能力の有無が問題になることがあります。(2)公正証書遺言の方式公正証書遺言の作成方式は、民法969条に定められています。もっとも、実際には、遺言者(またはその代理人)から遺言の内容を事前に聴取した公証人があらかじめ証書を作成し、これを遺言者が読み聞かせ、遺言者がこれを確認する形で行うことも多いです。署名及び押印をして完成させることも多いです。作成場所は、原則として公証役場になりますが、遺言者が病気や高齢などのために公証役場に行くことができない場合には、病院や自宅などで作成することもできます。4 遺贈(1)遺贈とは?遺言者が遺言によって財産を与える行為を「遺贈」といいます。遺贈を受ける者(受遺者)は、相続人である場合と第三者である場合があります。遺贈には、「特定遺贈」と「包括遺贈」があります。特定遺贈とは、特定の財産を与える遺贈であり、権利の移転のみが与えられます。他方、包括遺贈とは、遺産の全部または一部を割合で与える遺贈であり、権利のみでなく、義務(負債)も承継されます。本節の冒頭で紹介した試験問題では、各財産を特定した遺贈のことが前提となっています。(2)特定財産承継遺言など特定の相続人に遺産を相続させるという内容の遺言は、原則として、包括遺贈ではなく(相続分の指定を含む)遺産分割方法の指定です。また、特定の相続人の遺産を相続させるという内容の遺言を遺贈とせず特定財産承継遺言といい、原則として、遺産分割手続を経ることなく被相続人の死亡時に直ちに相続により承継されます。(3)遺贈の放棄遺言により指定された財産の取得を望まない場合、受遺者は、いつでも遺贈の放棄をすることができます(民法986条1項)。そのうえで遺贈された財産は、原則として相続人に帰属することになります。特定財産承継遺言(3-13(2) p.232参照)をしない限りは指定された財産を取得することになります。これに対して、包括遺贈の場合、受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するため(民法990条)、相続放棄と同じく、熟慮期間の制約があり(民法915条~919条参照)、家庭裁判所での手続でなければ遺贈の放棄をすることができません。本節の冒頭で紹介した試験問題では、「受遺者はいつでも遺贈を放棄してよい」という情報に基づいて判断し、更に遺贈放棄しても、相続人は、他の遺産を相続することができることになります。(4】受遺者の死亡受遺者が遺言者の死亡以前に死亡したときは、遺贈の効力は生じません(民法994条1項)。なお、特定財産承継遺言の場合、受遺者が死亡したときは、特別の定めがない限り、代襲して死亡した者の子が遺言の効力を受けることができます。そこで、実務では、「遺言者の死亡以前にAが死亡したときは、Bに遺贈する」という補充条項が設けられることが多いです。COLUMN 遺言の内容と異なる遺産分割特定の相続人に遺産のすべてを与える旨の遺言書がある場合であっても、受遺者である相続人が遺贈を放棄し、相続人全員で遺産分割の内容と異なった遺産分割を行った。遺言の内容と異なる遺産分割を行ったとしても、受遺者である相続人からの他の相続人に対して贈与として扱われることはありません。POINT 1自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書の全文、日付及び氏名を自分で書き、押印して作成する方式である。原則として、相続開始後に家庭裁判所での検認が必要である。公正証書遺言とは、遺言者から遺言の趣旨を伝えられた公証人が筆記して公正証書によって作成する方式である。検認は不要である。遺贈とは、遺言者が遺言によって財産を与える行為をいう。特定遺贈と包括遺贈がある。

「「税理士業務で知っておきたい法律知識」 森 章太・ 2022年4月1日」 ISBN978-4-534-05917-8

寄与分

公開:2025/09/09

令和2(2020)年度税理士試験の相続税法の理論問題では、「相続税の申告期限までに遺産分割協議が調わなかったことから、相続人は相続税法55条の規定に基づき相続税の納税猶予制度を共同で受けたい」という記述があります。相続税法55条は、未分割遺産に対する課税の取り扱いであり、分割されていない財産については、相続人らが民法(904条の2(寄与分)を除く)の規定による相続分などに従って財産を取得したものとしてその課税価格を計算するとします。「寄与分」が登場します。実務において、被相続人のためにどれだけのことを生前に行ったのであるから、他の相続人よりも遺産を多く取得できるはずだと相続人が主張することがありますが、これは寄与分の主張です。本節では、特別受益と同じく、具体的相続分を算定するための一要素である寄与分(民法)について解説します。1 寄与分とは?寄与分とは、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をした相続人に対して(法定相続分または指定相続分に上乗せして)与えられる相続財産への持分です。特別受益(3-20 p.261参照)と同じく、法定・(指定)相続分を修正して具体的相続分を算定するための一要素です(民法904条の2)。民法904条の2(寄与分)1項 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。○具体的相続分の算定① みなし相続財産相続開始時の相続財産 - 寄与分② 上記① × 法定相続分(または指定相続分)+ 寄与分2 寄与分の要件まず、寄与分が認められるための要件は、相続人であることです。相続人の配偶者や子の寄与分は、相続人の寄与分ではないから、寄与分は認められません。もっとも、相続人の補助者として、相続人の寄与分として考慮する余地はあります。なお、相続人によらない寄与については、平成30(2018)年7月の改正民法の施行により、特別寄与料の支払を求める制度が認められるようになりました(本節のCOLUMN)。次に、被相続人のための特別の寄与であることが要件です。特別の寄与といえるためには、通常期待される程度を超える貢献である必要性があるため、夫婦の協力扶助義務(民法752条)や親族間の扶養義務(民法877条)の範囲内の行為では、寄与分は認められません。また、他の相続人との間で著しい不公平が生じている必要があるというわけでは、寄与分は認められません。さらに、寄与行為により、被相続人の財産を維持または増加させたことも要件です。被相続人に対する精神的な支援だけでは、寄与分は認められません。3 寄与行為の類型寄与行為はいくつかの類型に分けることができます。1つ目は、「家業従事型」です。無報酬またはこれに近い状態で、被相続人の自家営業に従事する場合です。被相続人が経営する法人への労務提供は、法人に対する貢献であって、原則として、寄与分は認められません。ただし、実質的に被相続人の個人事業に近い場合には、寄与分が認められる余地があります。家業従事型の場合、寄与分は、(寄与した相続人が通常得られたであろう給付額)×(1-生活費控除割合)×寄与期間×裁量割合によって算定されます。生活費相当額を控除するのは、通常、寄与した相続人の生活費が家業収入から支出されているからです。2つ目は、「金銭等出資型」です。被相続人に対して財産上の給付を行う場合です。3つ目は、「療養看護型」です。無報酬またはこれに近い状態で、被相続人の療エン看護を行った場合です。寄与分が認められるためには、被相続人が要介護2(歩行や起き上がりなど移動が一人でできないことが多く、食事・排泄などに介助が必要であるが、排泄は一部手助けが必要な状態)以上の状態にあることが1つの目安となります。療養看護型の場合、寄与分は、(療養看護行為の報酬相当額(日当)×看護日数×裁量割合(0.7程度))によって算定されます。4つ目は、「扶養型」です。無報酬またはこれに近い状態で、被相続人を扶養した場合です。5つ目は、「財産管理型」です。無報酬またはこれに近い状態で、被相続人の財産を管理した場合です。4 遺贈との関係寄与分は、被相続人が相続開始時において有した財産の価額から遺贈(3-22(2) p.274参照)の価額を控除した残額が上回る場合に認められます(民法904条の2第3項)。被相続人の意思(遺贈)が及んでいない限りで適用されるにすぎません。相続開始時や遺贈後の財産の価額が少額であるときは、寄与分は考慮しないことになります。COLUMN 特別寄与料[1] 税理士試験への出題令和2(2020)年度税理士試験の相続税法の理論問題では、「(相続人)Aの配偶者Dは、被相続人甲と同居し、その療養看護を務めていたことから、相続開始後、A及びCの全員に対して自己の寄与に応じた額の特別寄与料の支払いを請求し、700万円の特別寄与料の支払いを受けることとなった」と記述されています。特別寄与料に関する出題が行われています。[2] 特別寄与料とは?被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者、相続欠格または廃除により相続権を失った者を除く)が、被相続人の療養看護に努めたことなどにより被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をしたにもかかわらず、相続人に対し、自己の寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払いを請求することができる制度です(民法1050条1項)。[3] 特別寄与料の要件特別寄与料が認められるための要件として、請求できない者は、被相続人の親族(相続人などを除く)に限定されます。被相続人の内縁配偶者などは請求できません。また、無償で労務を提供すること等です。寄与分の場合から対価を得ていたときは、認められません。金銭等出資型の寄与は、労務の提供と対比できないので、特別寄与料は認められません。さらに、被相続人の財産の維持または増加について、特別の寄与をしたことが要件です。[4] 特別寄与料の請求と負担特別寄与料の支払いについて、当事者間に協議が調わないときなどは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます。家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定めます(同条3項)。各相続人は、特別受益の額の特別寄与料の額を控除した相続分に応じて(法定・指定)相続分に寄与分を加えた額をもって特別寄与料を負担します(同条5項)。各相続人は、特別寄与料の額に(法定・指定)相続分を乗じた額を負担します。[5] 特別寄与料の請求期間の制限特別寄与者が相続開始及び相続人を知った時から6ヶ月を経過したとき、または相続開始の時から1年を経過したときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができません(同条2項但書)。[6] 特別寄与料の課税関係特別寄与料の額は、特別寄与者が被相続人からの遺贈により取得した財産とみなされます(相続税法4条2項)。一方、特別寄与料を支払うべき相続人については、相続税の課税価格に算入すべき相続財産の計算上、負担する特別寄与料の額を控除します(相法13条4項)。POINT 1寄与分とは、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をした相続人に対して与えられる相続財産への持分である。具体的相続分を算定するための一要素である。寄与分が認められるための要件は、相続人であること、相続開始前の特別の寄与であること及び寄与行為により被相続人の財産を維持または増加させることである。

「「税理士業務で知っておきたい法律知識」 森 章太・ 2022年4月1日」 ISBN978-4-534-05917-8

特別受益

公開:2025/09/09

遺産分割において、相続人全員の合意があれば、相続人の中、1人に対して遺産の全部を取得させるという相続分と異なる割合で分割することもできます。一方で、相続人間で争いが生じた場合には、(法定相続分や指定相続分ではなく)具体的相続分により分割になります。具体的相続分の算定にあたっては、「特別受益の持戻し」を考慮します。令和2(2020)年度税理士試験の相続税法の計算問題では、被相続人の課税価格に加算される財産の価額として贈与財産に関する資料として、「被相続人から生計の資本として生前贈与を受けた状況」が記述されています。試験問題では、相続財産の取得者が既に決まっていますが、争いが生じた場合には、被相続人から生計の資本として生前贈与を受けたことは、特別受益の持戻しにより具体的相続分を影響します。本節では、特別受益(民法)について解説します。1 特別受益の持戻し相続人の中に、被相続人から遺贈(3-22(2)p.271参照)を受けたり、生前贈与を受けたりした相続人がいた場合に、遺産分割において、その相続人が法定相続分に基づいて相続財産をさらに取得すると、不公平になります。そこで、遺贈または一定の贈与による特別受益を相続分の前渡しとみて、みなし相続財産(具体的相続分の算定の基礎)を算定します(民法903条)。みなし相続財産に法定相続分を乗じた価額を相続財産の価額に持戻して(加算して)、みなし相続財産に法定相続分を乗じた価額を相続財産(または指定相続分)に応じて各相続人に分配します。そして、特別受益を受けた相続人については、その受益額を控除した残額をもって、具体的相続分を算定します。民法903条(特別受益者の相続分)1項 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。○具体的相続分の算定①みなし相続財産相続開始時の相続財産(遺贈分を含まない)+ 特別受益の対象となる生前の贈与②上記①×法定相続分(または指定相続分)-特別受益となる遺贈・贈与の価額2 特別受益の種類(1)遺贈遺贈は、常に特別受益になります(民法903条1項)。特定の遺産を特定の相続人に相続させる旨の遺言は、原則として、遺贈ではなく遺産分割方法の指定ですが、特別受益の規定においては、遺贈と同様に扱われます。(2)生前贈与ア 概要婚姻・養子縁組のため、または生計の資本としてされたものが特別受益になります(同条1項)。特別受益は、相続財産の前渡しとみられるか否かを基準として判断します。なお、遺留分(3-22(4) p.274参照)を算定するための財産の価額に計算し、加算される贈与は、受贈者が相続人であるものに限られず、また贈与の内容も問われません。ただし、加算対象となる贈与には期間制限があります。相続人である場合には、原則として相続開始前の10年間にしたものに限られます(民法1044条3項)。遺留分に対して、特別受益の時期の対象となる贈与は、相続人に対するものに限定され、贈与の内容も限定されるものもありますが、期間制限はありません。イ 婚姻・養子縁組のための贈与特別受益となる婚姻のための贈与は、持参金などです。これに対して、挙式の費用は、相続財産の前渡しとはいえないため、特別受益にはなりません。ウ 生計の資本としての贈与特別受益となる生計の資本としての贈与は、生計の基礎として利用される財産上の給付をいいます。高校卒業後の教育(例、大学)の学費の支払いは、扶養義務の履行に基づく支援とみることができるため、一般的には特別受益には該当しません。居住用不動産の贈与やそのための金銭の贈与は、特別受益となります。遺産である土地の上に相続人が被相続人の許諾を得て建物を建て、その土地を無償使用している場合、土地使用借権の利益が贈与があったものとして、土地使用借借権相当額(更地価格の1/3~1/2程度)の特別受益を受けたものとされます。これに対して、相続人が被相続人の所有建物に無償で居住していたとしても、建物使用借権は特別受益にはなりません。相続財産の前渡しという性格が希薄なことなどが理由です。3 特別受益の評価(1)特別受益の評価基準時生前贈与が特別受益に該当する場合、みなし相続財産の算定にあたり、贈与財産の相続開始時の評価額を加算します。具体的には、贈与財産が金銭の場合、贈与時から相続開始時までの貨幣価値の変動を考慮するに足りず、消費者物価指数などを参考にして換算した上で算定します。贈与財産が建物の場合、贈与時の建物や設備を用いて、相続開始時に評価します。すると仮定して算定した価額を算定します。相続開始時の中古建物として交換価値を算定するものではありません。(2)贈与財産の価額の増減など贈与財産が受贈者の行為により滅失または価格の増減があったときは、相続開始時に現状のまま存在するものとみなして、相続開始時の評価額を加算します(民法904条)。他方、贈与財産が不可抗力によって滅失した場合(例、贈与建物の地震による倒壊)には、特別受益の相続においては、相続人は贈与を受けなかったものもみなされます(同条の反対解釈)。4 相続税における生前贈与の課税関係特別受益の持戻しと評価差額や評価損の限界や評価益などが認められやすいのが、相続税の計算における課税価格への贈与財産の価額の加算です。贈与財産のうち相続開始前3年以内の被相続人からの贈与について(相続税法19条1項)、精算課税の選択に係る贈与財産(相続税法21条の15)、贈与時精算課税の選択に係る贈与財産のうち、贈与財産の価額を加算します(相基通19-1、21の15-2)。5 超過特別受益特別受益が相続分を超過する場合(具体的相続分額がマイナスとなる場合)には、超過分を他の相続人に返還する必要はなく、相続財産(遺贈財産を除く)から新たに財産を取得することができないに止まります(民法903条2項)。6 持戻しの免除被相続人は、明示または黙示の意思表示によって特別受益者の受益分の持戻しを免除することができます(同条3項)。例えば、独立した生計を営むことができた相続人に対して、生活費の援助がなされた場合の贈与、当然の持戻しの免除の意思があるものと認められることがあります。被相続期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、居住用不動産を遺贈または贈与したときは、被相続人は、その遺贈または贈与について持戻し免除の意思を表示したものと推定されます(同条4項)。いて、特別受益の持戻しを免除する旨の意思表示をしたものと推定されます(同条4項)。COLUMN 生命保険金と死亡退職金(後編)生命保険金は、受取人が保険契約上の請求権として取得するものであり、相続財産ではありません(3-17 COLUMN2 p.253参照)。しかしながら、他の相続人との間に生ずる不公平が民法上の原則に照らし到底容認することができないほど著しいものであると評価すべき特段の事情がある場合には、例外的に特別受益に準じて持戻しの対象となります(判例)。特段の事情の有無については、保険金の額、この額の遺産総額に対する比率のほか、被相続人との同居の有無、被相続人との介護に対する貢献の度合いなどを考慮して判断します。これに対し、死亡退職金については、受給権者の生活保障を目的とするものであるから特別受益の持戻しの対象にするべきではないという見解と、資金の拠出者が性質を有するものであるから持戻しの対象とみるべきであるという見解があります。POINT 1遺贈または一定の贈与による特別受益を相続分の前渡しとみて、具体的相続分を算定する。遺贈は、常に特別受益となる。生前贈与のうち、婚姻・養子縁組のため、または生計の資本としてされたものが特別受益になる。特別受益には、被相続人の扶養義務の範囲とみられるものを基準として判断する。生前贈与が特別受益に該当する場合、みなし相続財産の計算にあたり、贈与財産の相続開始時の評価額を加算する。被相続人は、特別受益者の受益分の持戻しを免除することができる。

「「税理士業務で知っておきたい法律知識」 森 章太・ 2022年4月1日」 ISBN978-4-534-05917-8

不動産の遺産分割

公開:2025/09/09

不動産の遺産分割は多いことなることが多いです。長年にわたり相続人の生活の本拠である場合には金銭の入手が容易であること、不動産の評価が難しいこと、現金償還であれば金融機関によって容易に分割できるのに対して不動産の現物分割は困難であること、遺産相続に占める不動産評価額の割合が高く、相続人にとって重要な遺産であることなどが争いの原因になっています。税理士試験の相続税法の計算問題において、不動産の評価は毎年出題され、不動産の取得者は毎回決まっています。しかしながら、実務においては、遺産分割協議において誰がどのように取得するのかの争いが生じることが多くあります。本節では、不動産の遺産分割(民法)について解説します。1 遺産の不動産の評価遺産に不動産がある場合、まず、その評価額について相続人間で合意できるかが争点になります。不動産の評価額について協議する際に基準になるのが、①固定資産税評価額、②相続税評価額及び③不動産業者による査定価格などです。実際、③の査定書がよく提出され、家庭裁判所の調査官が調査を行う場合で合意されることもありますが、この査定書の価格を遺産分割調停において重視されすぎているのではないかと感じることがあります。「不動産を取得したい相続人はできる限り低い評価額にしたいと考えますし、反対に、取得希望のない相続人は高額にしたいと考えますので、思惑が異なる相続人間で合意できない場合もあります。その場合、遺産分割調停では、不動産鑑定士による鑑定を行うことになります。す。不動産鑑定では、取引事例比較法、原価法及び収益還元法を併用しながら算定します。鑑定費用は1物件当たり50万円以上かかる場合があり、相続人が負担しなければなりませんし、鑑定結果が出るまでに時間がかかります。鑑定を実施する場合の費用及び時間を考慮して、評価額についてどこまで譲歩できるのかを各相続人が検討することになります。2 遺産の不動産の分割方法不動産の遺産分割には、4つの方法があります。まず、「現物分割」です。原則的な分割方法であり、個々の遺産を各相続人に取得させる方法です。例えば、遺産に土地としてAとBがある場合に、AとBを別の相続人が取得する方法です。また、Aを分筆して別の相続人がそれぞれ取得するという方法もあります。現物分割を採用する多くの場合は、過不足を調整するため、代償分割も併用されています。2つ目は「代償分割」です。相続分を超える遺産を取得させる代わりに、他の相続人に対して代償金を支払わせるという方法です。代償金を支払う資力があることが代償分割が認められる要件となります。現物分割ができない場合や相当ではない場合、または相続人間において合意が成立している場合などに、代償分割は採用されます。税理士試験の平成24(2012)年度の相続税法の計算問題では、「子Xと子Y以外の他の相続人間で遺産分割協議がまとまらなかったため、子Xは家庭裁判所に遺産分割の調停を申立てた。」その後、「相続税の申告期限までに、遺産分割調停において、子Xは遺産を取得しない代わりに、配偶者乙から500万円、子Aが1000万円をそれぞれ子Xに支払う」ことで調停が成立したと記述されており、代償分割が出題されています。また、平成26(2014)年度の所得税法の計算問題では、「乙は、乙の相続に伴う遺産分割の際に、乙の所有する土地を共同相続人である妹に代償財産として交付する遺産分割を行った。」その後「土地の取得費は4200万円であるが、代償分割時の時価は、6000万円である」と記述されています。3つ目は「換価分割」です。遺産を売却してその売却代金を相続人が分割する方法です。現物分割が不可能または相当でなく、かつ代償分割ができない場合に選択されます。最後の4つ目は共有による分割です。「共有分割」です。共有分割は、上記3つの分割の方法が困難な状況で相続人が共有による取得を希望する場合などに考えられます。遺産共有状態(民法898条)にあった不動産は、共有分割によって、物権法上の共有状態(民法249~262条)になります(1-3(4) p.176参照)。共有状態であっても、不動産全体について共有持分を有し、全体を利用することができます。物権法上の共有関係を解消する手続として、共有物分割請求(民法256条)があります。◎遺産の不動産の分割方法①現物分割 ②代償分割 ③換価分割 ④共有分割3 不動産の遺産分割の課税関係(1)代償分割代償分割の課税関係として、相続税の課税価格は、代償金の交付を受けた者の相続税は、代償または遺贈により取得した相続財産の価額に、交付を受けた代償財産の価額を加算します。一方、代償金の交付をした者については、相続または遺贈により取得した相続財産の価額から、交付した代償財産の価額を控除します(相基通11の2-9)。また、代償分割により負担した債務(代償金)が金銭以外の資産の移転を要するものである場合において、資産の移転があったときは、履行した者は、履行の日の前の日の資産の時価により資産を譲渡したものとして所得税(譲渡所得)が課されます(所基通33-1の5)。(2)換価分割換価分割の課税関係として、相続税だけでなく所得税(譲渡所得)も課されます。換価時に相続人間で換価代金の取得割合が確定しておらず、後日遺産分割される場合、換価代金は、法定相続分に応じて各相続人に帰属します。申告は、申告後、換価代金を法定相続分と異なる割合で分割することとなっても、原則として所得税の更生の請求などはできません。COLUMN 弁護士と非弁行為貧困なく、なんらかの理由に相談したいが、自分の利益のため、他人の法律事件に介入することもあります。当事者からの利益を求め、法律事件の公平な判断を踏み倒す活動をする団体を禁止することになるため、弁護士または、弁護士法人でない者について一般の法律事件に関して法律事務を取り扱うことを業とすることを禁止しています。違反すると、2年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます(弁護士法72条)。「法律事件」とは、法律上の権利義務に関して争いや疑義があり、または新たな権利義務の発生に関する案件をいい、「法律事務」とは、この案件を処理することを指します。専門的な法律知識を駆使する法律事務の取り扱いをなし、それが業務性を帯びるに至っていることをいいます。(相続税申告の依頼を受けた)税理士が遺産分割協議に関与することは弁護士法に抵触することがあります。行政書士の事件ですが、相続財産、相続人の調査、相続手続きなどの証明書や遺産分割協議書の作成、各書類の内容について相続人に説明することは、行政書士の業務の範囲であるが、遺産分割につなぎ紛争が生じかねず、行政書士が遺産分割の調停・訴訟の斡旋をした範囲であるかぎりでなく非弁活動となるとして、他の相続人との折衝についての遺産分割をできなくした裁判例(東京地裁平成5(1993)年4月22日判決・判タ829号279頁)があります。POINT 1不動産の評価額について協議する際に基準になるのが、①固定資産税評価額、②相続税評価額及び③不動産業者による査定価格などである。不動産の評価額について相続人間で合意できない場合、家庭裁判所の遺産分割調停では、不動産鑑定士による鑑定を行う不動産の分割方法として、現物分割、代償分割、換価分割及び共有分割がある。

「「税理士業務で知っておきたい法律知識」 森 章太・ 2022年4月1日」 ISBN978-4-534-05917-8

祭祀財産と葬式費用

公開:2025/09/09

税理士試験の相続税法の計算問題には、祭祀財産や葬式費用が出題されています。令和3(2021)年度の試験問題では、配偶者が取得する祭祀財産に日常礼拝の用に供している仏壇等60万円が含まれています。令和2(2020)年度の試験問題では、遺産に墓地300万円が含まれています。また、令和3(2021)年度の試験問題では、被相続人の通夜及び葬式に要した費用は、すべて養子Aが負担したとされています。試験問題では、祭祀財産の取得者や葬式費用の負担者は既に決まっていますが、実務においては、取得者や負担者をめぐり争いとなることがあります。本節では、祭祀財産と葬式費用(民法)について解説します。1 祭祀財産祭祀財産とは、系譜(例、家系図)、祭具(例、仏壇、位牌)及び墳墓(例、墓石)をいいます。墓地は、墳墓そのものではありませんが、墳墓に準じて取り扱われます。祭祀財産は、祭祀主宰者が承継します(民法897条)。祭祀主宰者は、第1に被相続人の指定、第2に(被相続人の指定がないときは)慣習、第3に(被相続人の指定がなく慣習が明らかでないときは)家庭裁判所の審判によって決まります。もっとも、被相続人から祭祀主宰者に指定されても、祭祀を行う法律上の義務は負いません。家庭裁判所の審判では、「承継候補者と被相続人との間の身分関係や事実上の生活関係、承継候補者と祭具等との間の場所的関係、祭具等の取得の目的や管理等の経緯、承継候補者の祭祀主宰の意思や能力、その他の一切の事情(例えば利害関係人全員の生活状況及び意見等)を総合して判断すべきであるが、被相続人の生前の意思や故人に対する愛情、感謝の気持ちといった関係者の主観的事情はそれ自体で決定的要因とはならない」と判断したものや、「被相続人との親族関係等からみて、相続人等の中から選ばれるのが通常であるが、相続人以外の者であっても、被相続人との間で緊密な関係を保ち、被相続人の死亡後もその者を慕ううちその者を祭祀主宰者と指定した方が被相続人の意思に合致すると考えられる場合もある」と判断したものがあります(最高裁平成元(1989)年7月18日決定・判例時報1309号99頁)。祭祀財産は相続財産とは切り離されるので、相続放棄(3-15(1) p.243参照)をしても、祭祀財産を承継することはできます。また、承継について争いとなった場合に、家庭裁判所においては、遺産分割の事件とは別個の事件として扱われます。2 葬式費用葬儀費用は、相続開始後(被相続人の死亡後)に生じた債務であり、支払金額や分担について争いがあっても、家庭裁判所の遺産分割の審判で取り扱うことができます。また、民事訴訟で解決するしかありません。民事訴訟手続では、合意や慣習が認められない限り、葬式に係る関係者と契約を締結して葬式を取り仕切った喪主(葬式主宰者)が葬儀費用の負担者であると考えられています。なお、香典は、遺族への贈与であり、相続財産には含まれません。3 祭祀財産と葬式費用の課税関係(1)祭祀財産墓所、霊廟及び祭具並びにこれらに準ずるものは、相続税の非課税財産となります(相法12条1項2号)。本節の冒頭で紹介した試験問題に記載された、日常礼拝の用に供している仏壇及び墓地は、相続税の非課税財産となります。(2)葬儀費用相続人(包括受遺者などを含む)が被相続人の葬式費用を負担したときは、相続税の課税価格から負担額を控除することができます(相法13条1項2号)。POINT 1祭祀財産とは、系譜、祭具及び墳墓である。祭祀財産は、祭祀主宰者が承継する。祭祀主宰者は、第1に被相続人の指定、第2に慣習、第3に家庭裁判所の審判によって決まる。葬儀費用の負担者は、合意や慣習が認められない限り、葬式に係る関係者と契約を締結して葬式を取り仕切った喪主(葬式主宰者)である。

「「税理士業務で知っておきたい法律知識」 森 章太・ 2022年4月1日」 ISBN978-4-534-05917-8

遺産分割の対象

公開:2025/09/09

遺産分割の対象となるのは、被相続人の相続開始時のすべての財産ではありません。本節では、誤解されることが多い遺産分割の対象(民法)について解説します。1 遺産分割の対象遺産分割の対象となるのは、①相続開始時に存在し、かつ②遺産分割時にも存在する未分割の遺産です。①だけでなく、②(及び③)も充たすものが対象となります。2 相続開始後・遺産分割前に処分された遺産従来、相続開始後・遺産分割前に相続人などによって処分された遺産は、共同相続人全員の同意がない場合には、遺産分割の対象から除外され、遺産分割手続内で、処分者に対して、不当利得または不法行為に基づく金銭賠償の請求をする他ないと考えられていました。しかしながら、民法改正により、令和元(2019)年7月1日以降に開始した相続については、共同相続人の全員の同意があれば(ただし、処分したのが共同相続人であるときは、その共同相続人の同意は不要)、処分された財産が遺産分割時に遺産として存在するものとみなすことができるようになりました(民法906条の2)。処分された財産が遺産として存在するものとみなすのであり、処分による代償財産(例、遺産を売却した代金)を遺産として扱うのではないことに注意が必要です。3 遺産の代償財産遺産の代償財産(例、遺産を売却した代金、遺産建物が焼失したことによって受け取った損害保険金)は、各共同相続人が自己の相続分に応じて取得するので、遺産分割の対象とはなりません。ただし、共同相続人全員の同意がある場合(処分した相続人の同意も必要)には、遺産分割の対象となります。なお、代償財産を遺産分割の対象とする場合、民法906条の2(本節の2)に基づき、処分した財産が存在しているものとして扱うことはできません。4 可分債権可分債権(例、貸付金)は、法律上当然に分割され(民法427条)、各共同相続人が法定相続分に応じて権利を承継するので、遺産分割の対象とはなりません。ただし、共同相続人全員の同意があれば、遺産分割の対象とすることができます。なお、預貯金債権は可分債権ですが、例外的に、同意の有無にかかわらず、遺産分割の対象となります。5 相続開始前に被相続人以外の者によって戻された相続財産相続開始前に被相続人以外の者によって払い戻された被相続人の預貯金は、相続開始時に存在しないので、遺産分割の対象にはなりません。仮に、被相続人が払い戻した者に対して不法利得または不法行為に基づく金銭賠償をしていても、金銭債権は相続開始時に確定的に応じて応分に分割されるので(本節の2)遺産分割の対象にはなりません。ただし、相続開始前に払い戻された預貯金は、共同相続人全員の同意があれば、遺産分割の対象とすることができます。6 遺産不動産から生じた賃料遺産である賃貸不動産から(遺産分割までの間に)生じた賃料は、遺産とは別個の財産であるため、遺産分割の対象となりません。各共同相続人が自己の相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得します。つまり、賃料は、遺産分割の対象にはなりません。不動産は独立した財産であり、各共同相続人は法定相続分に応じて対価を取得できます。ただし、共同相続人全員が同意した場合には、遺産分割の対象とすることができます。税理士試験の所得税法の令和元(2019)年度の計算問題では、(相続開始後)遺産分割協議が成立するまでに遺産不動産から生じた賃料(不動産所得)の帰属が問われています。また、平成26(2014)年度の計算問題では、「相続財産に賃貸中のアパート(以下「B建物」という。)があったが、相続税による相続財産分割で確定したのは、本件で2月1日である。B建物は、遺産分割によりAが100%取得している。」、「法定相続人は姉と乙の2名である。」、「本年のB建物に関する損益計算は、次のとおりである。この損益計算は、遺産分割確定前の損益も含まれる」と記述されています。7 可分債務相続債務は、可分である限り(例、借入金)、相続開始と同時に各相続人に法定相続分(または指定相続分)に応じて分割承継されるので(民法427条、分類主義)、遺産分割の対象にはなりません。ただし、共同相続人全員の同意があるときに、家庭裁判所の遺産分割審判において遺産分割の対象として取り扱うことができます。同意があっても、遺産分割審判では取り扱うことはできません。なお、共同相続人間で協議して相続債務の負担について合意することはできますが、相続債権者にはその合意の効力は及びません(民法902条の2類推)。相続債権者は、各共同相続人に対して法定相続分に応じた金額の請求をすることができます。COLUMN 1 相続税申告書の管轄税務署と遺産分割調停の管轄裁判所相続税申告書の提出先(管轄)は、被相続人の死亡時における住所が日本国内にある場合は、被相続人の住所地を所轄する税務署です。これに対して、遺産分割の調停の申立書の提出た先(管轄)は、原則として、相手方相続人の住所地を管轄する家庭裁判所となります。COLUMN 2 生命保険金と死亡退職金(総論)生命保険契約者が被相続人、被保険者が被相続人、相続人が特定の者の場合に、保険金が支払われます。保険金は、相続人の固有財産であり、相続財産ではありません。また、死亡退職金も、受取人の固有財産であり、相続財産ではありません。これに対し、相続税法上は、生命保険金と死亡退職金は、みなし相続財産となります(相続3条)。POINT 1遺産分割の対象となるのは、①相続開始時に存在し、かつ②遺産分割時にも存在する未分割の遺産である。令和元(2019)年7月1日以降に開始した相続については、共同相続人の全員の同意があれば(ただし、処分したのが共同相続人であるときは、その共同相続人の同意は不要)、相続開始後に処分された財産が遺産分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。遺産の代償財産、可分債権(預貯金債権は除く)、相続開始前に払い戻された預貯金、遺産不動産から生じた賃料及び可分債務は、原則として、遺産分割の対象とはならない。ただし、共同相続人全員の同意があるときは、遺産分割の対象となる。

「「税理士業務で知っておきたい法律知識」 森 章太・ 2022年4月1日」 ISBN978-4-534-05917-8

特別縁故者に対する相続財産の分与

公開:2025/09/09

令和元(2019)年度税理士試験の相続税法の理論問題において、災害があった場合に使用が求められている相続税の課税価格の計算の特例について、適用が可能とされている相続税の課税価格の計算の特例について、「民法958条の3に規定する特別縁故者に対する相続財産の分与についての記載は要しない」とされています。特別縁故者に対する相続財産の分与が相続財産において、どのように位置づけられているのか気になるところです。本節では、特別縁故者への相続財産の分与(民法)について解説します。1 相続人のあることが明らかでない場合相続人が死亡して、相続人のあることが明らかでない場合(例、戸籍上相続人がいない場合、戸籍上の相続人全員が相続放棄(3-15(1)参照)した場合)には、相続財産の管理及び清算をするために、相続財産管理人を法人とします(民法951条)。なお、法人としての設立登記などの手続は不要です。そして、利害関係人などの請求によって、家庭裁判所は、相続財産管理人を選任します(民法952条)。相続財産管理人は、相続人を(念のために)捜索したり、相続財産を保全したり、相続債権者などに弁済したりします(民法953条~958条)。令和2(2020)年度においては、相続財産管理人選任(相続人不存在)の申立ては2万3611件でした(司法統計)。相続財産管理人が民法に定める手続を行った後、相続財産が存在し、相続財産を処分する場合には、特別縁故者に分与する制度(本節の2)があります。最終的に残った相続財産は国庫に帰属します(民法959条)。本節のCOLUMN1。相続人が相続財産などを占有する前に国庫に帰属するわけではなく、上記手続を経て国庫に帰属します。2 特別縁故者に対する相続財産の分与相続人の不存在が確定し、清算の結果、相続財産が残った場合には、特別縁故者が相続人捜索の期間の満了後3ヶ月以内に家庭裁判所に請求することによって、相続財産の全部または一部が分与されます(民法958条の3)。特別縁故とは、被相続人と密接な人的関係を前提とし、生前の意思を推測する趣旨(3-26(2)参照)と相続財産を給与する制度と考えられています。特別縁故者には、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、被相続人に特別の縁故があった者が該当します。例えば、献身的に介護をしていた内縁の配偶者などがこれにあたります。特別縁故者に相続財産を分与するかどうか、分与する場合には相続財産の全部なのか一部なのかは、家庭裁判所の裁量により決められます。家庭裁判所の審判によって分与される財産が確定し、相続財産管理人から特別縁故者に財産が移転することになります。令和2(2020)年度においては、特別縁故者に対する相続財産の分与の申立て(終受)が1138件あり、認容された件数は890件でした(司法統計)。課税関係として、特別縁故者が分与を受けた相続財産は、遺贈により取得したものとみなされ、相続税が課されます(相続税法4条)。(一般所得)が課されるのではありません。COLUMN1 国庫帰属相続財産が国庫に帰属すると、国の財産が増えることになります。令和2(2020)年度に国庫に帰属した相続財産は603億円でした(財務省新聞Web・令和3(2021)年2月4日)。しかしながら、国庫に入ることなく埋蔵されている遺産があるかもしれません。例えば、最近化した兵庫県の旧武庫郡にあった「世界平和観音像」が令和2(2020)年3月30日に国庫に帰属することになりました。観音像は約100mの高さの巨大なものであり、所有者(被相続人)が死亡した平成18(2006)年以降閉鎖されていましたが、老朽化により危険性などが生じていました。国は8.8億円をかけて観音像の解体撤去工事を進めています。COLUMN2 所有者不明土地不動産登記簿謄本などにより調査しても所有者が判明しない、または判明しても連絡がつかない土地の存在が社会問題になっています。土地所有者の危険や悪意の放棄が放置されていたり、震災後の復興の阻害になったりします。所有者不明土地の発生予防と利用円滑化のため、令和3(2021)年4月21日、「民法等の一部を改正する法律」及び「相続等により取得した土地所有権の国への帰属に関する法律」が成立しました。原則として、令和5(2023)年4月27日までに施行されます。①不動産を取得した相続人は、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請を行うことが義務づけられます。正当な理由のない申請漏れには、過料の前科があります。②相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により取得した土地を放棄して、国庫に帰属させることが可能となります。ただし、管理コストの国への転嫁や土地の管理をおろそかにするモラルハザードが発生するおそれを考慮して、一定の要件を設定し、法務大臣が審査します。審査手数料のほか、承認された場合には、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額の負担金の支払いが求められます。③相続開始から10年を経過したときは、具体的相続分(3-26(2)参照)による遺産の分割利益を消滅させ、画一的な法定相続分で遺産分割を行う仕組みが創設されます。COLUMN3 空き家総務省の住宅・土地統計調査(平成30(2018)年)によると、全国の空き家のうち半分以上(52.2%)が相続・贈与により取得したものとなっています。適切な管理が行われていない空き家が防災、衛生、景観などの地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしているため、「空家等対策の推進に関する特別措置法」が制定され、所有者に適切な管理を促すことができましたが、所有者が不明であったり、放棄すれば国庫に帰属すると考えられていることなどから、必ずしも問題を解決しているわけではありません。その結果、国または地方公共団体が代執行を行うこともありました。令和元(2019)年、令和2(2020)年までに行われた代執行は195件の代執行が行われました。分譲マンションの場合、解体するには原則として所有者全員の同意が必要になるので、1人でも反対すると解体できません(3-5(4) p.182参照)。解体できないまま老朽化し、行政代執行により解体された事例もあります。POINT 1相続人のあることが明らかでない場合には、利害関係人などの請求によって、家庭裁判所は、相続財産管理人を選任する。相続財産管理人が民法に定める手続を行った後、相続人の不存在が確定し、相続財産が残った場合には、特別縁故者に分与する可能性がある。特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた者、療養看護に努めた者などである。特別縁故者に相続財産を分与するかどうか、分与する場合には相続財産の全部なのか一部なのかは、家庭裁判所の裁量により決められる。最終的に残った相続財産は国庫に帰属する。

「「税理士業務で知っておきたい法律知識」 森 章太・ 2022年4月1日」 ISBN978-4-534-05917-8

限定承認と相続放棄

公開:2025/09/09

限定承認と相続放棄は、税理士試験の相続税法の計算問題において出題されています。令和2(2020)年度の試験問題では、「長女Bは、被相続人甲に係る相続について、適法に相続放棄をしている」という記述があります。また、令和元(2019)年度の試験問題では、子Fが相続を放棄し、相続人になって相続を放棄した者あるいは限定承認をした者はいない」という記述があります。国税徴収法でも出題されており、平成28(2016)年度の試験問題において、「甲の相続人Aは、乙のみであり、乙は相続について限定承認をしている」とされています。本節では、限定承認と相続放棄(民法)について解説します。1 相続人の3つの選択肢相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条)。単純承認、限定承認及び相続放棄という3つの選択肢があります。単純承認とは、不確定的にしか帰属していなかった相続財産を確定的に帰属させる意思表示です。被相続人の権利義務を無制限に承継します(民法920条)。何もしせずに熟慮期間が経過すると、単純承認とみなされます(民法921条2項)。積極的に選択するのではなく、よくわからないうちに承認したものとみなされている方がいるのが現状です。限定承認とは、被相続人の残した債務などを相続財産の限度で支払うことを条件に相続を承認する意思表示です(民法922条)。相続人全員が共同で行わなければならず(民法923条)、また、相続財産を調査して財産目録を作成して提出しなければならないこともあり(民法924条)、限定承認はあまり利用されていません。相続放棄とは、不確定的に帰属していた相続の効果を消滅させる意思表示です(民法939条)。令和2(2020)年度の申述受理件数は、限定承認が678件であるのに対し、相続放棄は23万4732件となっています(司法統計)。なお、令和2(2020)年における日本人の年間死者数は約137万人です(厚生労働省人口動態統計)。2 熟慮期間相続人は、3つの選択肢のいずれにするかを、相続が発生し、自己が相続人であることを知った時から3ヶ月以内に判断(考慮期間)に決めなければなりません(民法915条1項本文)。熟慮期間は、相続人ごとに進行し、請求によって家庭裁判所において伸ばすこともできます(同条1項ただし書)。なお、平成26(2014)年の東日本大震災のときは、被災者の熟慮期間が8月31日まで一律に延長されました。熟慮期間の起算は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」なので、被相続人の死亡だけでなく、自分が相続人になることを知った時です。例外として、相続財産があるときは、相続財産が全くないと信じており、信じることについて相当な理由があるときは、相続財産の全部または一部の存在を認識した時または通常認識すべき時から熟慮期間が開始します(判例)。この判例は、あくまでも相続財産が全くないと信じていたことに相当な理由があると認められた場合であり、3ヶ月経過後に多額の相続債務が発覚した場合の相続放棄については、見解が分かれています。民法915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)1項 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

「「税理士業務で知っておきたい法律知識」 森 章太・ 2022年4月1日」 ISBN978-4-534-05917-8
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